電荷が波打つ超伝導原子シートによる磁気量子センサー開発
~次世代量子?超伝導デバイスの鍵を握る~
2025年07月24日
研究?産学連携
{web_name}大学院工学研究院の山田豊和准教授、同大大学院融合理工学府博士後期課程の市川稜氏、高知工科大学の稲見栄一教授、ならびに物質?材料研究機構(NIMS)の高橋有紀子研究員からなる研究チームは、テープでペリペリと簡単に剥がすだけで、物質でも最も薄い原子一層の厚さまで薄くできる原子層物質が、高感度な磁気量子センサーになることを発見しました。
走査トンネル顕微鏡(STM)を用いた表面観察により、金属の一種であるニオブ(Nb)と、非金属の元素であるセレン(Se)でできた非常に薄い「セレン化ニオブ」薄膜の表面を観測したところ、極限まで薄くすると、通常では見られない量子状態の一種である電荷密度波(以下、CDW)が大きな歪みによって出現することを発見しました。さらにこの特異なCDWは、わずかな磁場を加えるだけで全く異なる電荷密度波構造に切り替わるという、これまでに報告のない現象が確認できました。これは、このセレン化ニオブ薄膜が、高感度な磁気量子センサーになることを示唆します。
この研究成果は、2025年7月10日付でSpringer Natureが発行する学際的科学ジャーナルnpj 2D Materials and Applicationsにオンライン公開されました。
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図1:セレン化ニオブ結晶表面にテープを貼り付けてから剥がす際の断面モデル図。右図は 透過電子顕微鏡像:結晶内で積層しているニオブ単層膜(赤色の原子)とセレン単層膜(緑色の原子)。上下のセレン単層膜がニオブ単層膜を保護しています。